「捻った記憶はないけれど、走ると足首が痛い」「ゆっくりジョギングでは問題ないのに、スピードを上げると痛みが出る」――
このような症状が続いている場合、足部の疲労骨折を疑う必要があります。
初期段階では単なる筋疲労や靭帯の張りと混同されがちですが、適切に対応しなければ完全な骨折や長期離脱につながるおそれがあります。
本記事では、足部疲労骨折の特徴、診断のポイント、対処法について解説します。
疲労骨折とは何か?―「繰り返しの微細損傷」による骨の損傷
疲労骨折(stress fracture)は、一度の外傷によらず、長期にわたる繰り返しの負荷によって骨に微細な損傷が蓄積し、最終的にひびや不全骨折が生じるものです。
特に、以下のような条件下で生じやすいとされています。
- 繰り返しのランニング、ジャンプ動作
- 過剰なトレーニング量の急増(例:走行距離の急な増加)
- 柔らかすぎる or 硬すぎる路面環境
- 筋力・柔軟性のアンバランス(特に下腿三頭筋や腓骨筋群)
- 栄養・ホルモン・骨密度の問題(女性アスリート三主徴など)
特に足部においては、舟状骨、第2・3中足骨、踵骨、第5中足骨基部に多く見られます。
足関節外側(外果周辺)や足根骨(特に立方骨や舟状骨)に痛みがある場合もあります。まれに距骨にも起きることが多く見落とされやすいため注意が必要です。

疲労骨折を疑う主な症状と臨床所見
疲労骨折は進行性のため、早期発見がカギとなります。以下の所見がそろう場合、整形外科での精査を強く推奨します。
- 局所的な圧痛(限局性圧痛):骨のライン上に明確な圧痛がある
- 運動時の増悪:特に速く走る、ジャンプ、方向転換で痛みが出現
- 運動後の遷延する鈍痛:活動後にジンジンとした痛みが続く
- 腫脹や熱感は基本的に目立たない(炎症反応は軽度)
また、疲労骨折はX線で初期に描出されないことが多く、骨梁の不整や仮骨形成が見られるのは2〜3週間以降です。疑わしい場合には、MRI(最も感度が高い)や骨シンチグラフィーが有用です。
足関節痛=靭帯損傷とは限らない
足関節外側に痛みがあると、しばしば「過去に捻ったかも」「靭帯の問題かな」と思われがちですが、疲労骨折との鑑別が重要です。
例えば第5中足骨基部の疲労骨折(Jones骨折)は、再発しやすく治癒しにくいことでも知られ、誤診・軽視されると手術適応となることもあります。
対処法と競技復帰への考え方
疲労骨折が疑われる場合、以下のような対応が推奨されます:
- 即時の運動制限・荷重コントロール(症状の程度により免荷や松葉杖使用)
- 装具療法(足底板・サポーター・ウォーキングブーツなど)
- 栄養指導(特にカルシウム・ビタミンD・エネルギー摂取の適正化)
- 必要に応じて血液検査で骨代謝マーカー、ビタミンD濃度などを評価
早期復帰を焦ると骨癒合が遅れ、慢性化・再発リスクが高まります。
治癒が確認されるまでは段階的な運動負荷管理が必要です(低負荷→中負荷→競技復帰)。
違和感は「小さな警告」。早期対応が鍵です
足首の痛みが徐々に強くなっているのに「我慢できるから」と放置していませんか?
疲労骨折は、発見が遅れるほど競技離脱が長引く厄介な障害です。
「捻っていないのに走ると痛い」
「ゆっくり走ると問題ないがスピードを上げると痛い」
「徐々に痛みが強くなってきている」
このようなケースでは、整形外科での評価と画像診断を受けることをおすすめします。

